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社長コラム 2023.08.08

日本庭園の現状の問題

静岡新聞社オトナインターンシップ

全国各地に日本庭園は数多くあるが、その多くが維持管理の難に直面している。毎年人知れず庭園が閉園に追い込まれていく。現代に残る庭園の多くは富裕層によって所有されてきた。最近、「格差社会」という言葉を度々耳にするが、果たして格差がなかった時代があったのだろうか…恐らく格差がなかったのは戦後数十年のことではないだろうか。現存する名庭園を所有してきた富裕層のレベルは段違いで、例えば横浜にある原三渓の「三溪園」は当時から外苑と内苑を分け、外苑を近隣の人の憩いの場として開放してきた。今ほど娯楽がない庶民に対して、私有地である庭園空間を還元したのである。今も昔も我々のような庶民においては、日本庭園とのかかわり方に大差はないが、所有者たる富裕層の懐が違うのである。所有者が変わったいま最大の問題は維持管理が十分に行き届かないことである。研究者でもない限り、誰も荒れ果てた庭園をお金を払って見にいくことはない。庭園は他の文化財と異なり日々変化していく。こうした日常管理に対して国からの補助はなく、所有者が費用を捻出するしかない現状にある。庭園にとって来場者の増加こそが庭園のクオリティを維持する唯一の方策であり、活路を見出していかなければならない。

写真:「三渓園」